2011年6月25日土曜日

東日本遠征桧枝岐川編:カヤック旅情

珂川上流を漕ぎぎった一行は、一路桧枝岐へ移動しました。桧枝岐へ出向く機会があれば、出発前に必ず中川善之助「桃源境桧枝岐村」に目を通します。昭和16年刊行の古い書籍ですが、中川が描いた桧枝岐までの道すがらの情景思い浮かべながら車を運転するのは感慨深いものがあります。
内川から一里半で大桃というやや大きな部落に着く。ここを過ぎて半道くらいまでは田も畑もある。
「こんちわ」と麻を刈っている農婦に言葉をかけると、「鉱山かネ」と訊かれた。この辺から館岩

方面へかけては、足尾銅山や西沢金山からの鉱脈が伸びているというのでかなり鉱山師が
入り込むらしい。この辺で桧枝岐村の役場の人が自転車で私に追いつき、私のルックザツクを
車につけて先に村へ行ってくれた。

大桃分の耕地がなくなると、もう自然の他は何もない。人手のかかったものは足の下の沼田

街道だけといってもよい。道の左側にはいつも桧枝岐川の急流がある。右側はすぐ山裾で、
時々遙か前方の山間から会津駒の雄姿と、それから南に延びた稜線の最後に三ッ岩のトツケ
が見える。川の対岸も千三、四百米の山を連ねた屏風である。左も右も前も後も全く山又山、
ただ足許の谷深く流れる桧枝岐川だけが路を切開いてくれる。ここまで来るともう人間には滅多
逢わない。


六地蔵に紛れ込む元やん。この写真、とても気に入ってます。


















桧枝岐歌舞伎の舞台。周囲は半円状のコロシアムになっている。

桧枝岐はかつて中川が描いた辺境の地というイメージはもう全くありませんが、この地を支配する気には何か特別なものを感じます。桧枝岐は漕いで楽しいのですが、民族学的にも濃密なこの土地をほんの少し知ってから漕ぐと、土地の精霊達と交流出来るような不思議な感覚で川を下れます。中川は桧枝岐川をこのように表現しています。

桧枝岐川はいつも深い谷の下に岩を噛んで流れている。長瀞のようになった所もあり、寝覚
(ねざめ)の床のような所もある。瀬も滝もあり、時には淀もあって見飽きない川だ、その川面には
セキレイが尾を振って跳ね廻っている。その谷の上空をイワツバメの群が流星の様に流れ来り
流れ去る。時々路傍の叢からヤマドリがチョコチョコと行手の路に現われて、大急ぎに路を
横切って行く。またカケスが飛ぶ。ホオジロが鳴く。

今から70年前の文章ですが、カヤックに乗り水面の高さに目線を置いて広がる桧枝岐川の現在の風景と全く変わりません。

イナズマドロップを制覇した南極3号。クリークガールズのセンターポジション確定。
























さて、肝心のカヤックの方ですが、桧枝岐でもクリークガールズが圧倒的な存在感を示しました。日曜日から参加したクリークガールズのリーダー格、南極3号はイナズマドロップでも尻込みするチキンハートの男性陣を尻目に見事なラインでクリア。まったく頭が上がりません。









当日の様子については、へたっぴカヤッカーさん柿の種仙人さんのブログを参考にしてください。

話は前後しますが、那須から移動して前日泊まった宿は丸屋新館。今回の幹事、へたっぴカヤッカーが予約をしてくれました。部屋もきれいだし、食事は蕎麦を中心に据えた地元の料理のフルコース。もともとは土地の痩せた桧枝岐の質素な伝統的な郷土料理の数々が、豪華な会席料理としてアレンジされ、ふるまわれました。









































宿と食事には拘るのが我々の旅です。昨年の北海道遠征の際に宿泊したオーベルジェコムニに続いて、幹事のヘタッぴカヤッカーさんはいい宿を予約してくれました。

今回の桧枝岐は天候にも恵まれ、素晴らしいコンデションでした。旅館に泊まり、ゆったりとした旅情を味わいながらカヤックが出来るなんてまったく贅沢な旅です。参加者全員にとって忘れられない旅のひとつとなったようです。

桧枝岐川は険悪な箇所はないものの、レスキュー体制を完璧に整えて臨む必要があるそれなりのレベルの川です。この川に興味がある方はClass5がツアーを定期的に開催していますので、C5のツアーに参加されることをお勧めします。

追記:屏風岩付近での放射線量は0.1μSv/H程度でした。桧枝岐村村内中心部でもほぼ同様の値です。

8 件のコメント:

柿の種仙人 さんのコメント...

Actonさん、今回は特に素晴らしいブログですね。詩情が滲みだしていて、読んでいると心が桧枝岐にトリップしてしまうようです。Actonさんと知り合えて良かったとつくづく思っています。これからもブログ、楽しみにしています。

Unknown さんのコメント...

仙人さん、お褒めにあずかり恐縮です。実はかなり手を抜いているのですが...。最近手抜きが多くて反省している次第です。とはいえ、桧枝岐には想いがあるので一気に書けて楽です。他の題材についてはどうも最近遅筆で、困っています。

つ・あ さんのコメント...

今回はお世話になりありがとうございました。いや~楽しかったです!

川も最高でした!

柿の種さんも書かれていますが、本当に、70年前の文章素晴らしいです。読めばすぐに桧枝岐の空気にトリップできます。

是非この本自体を読んでみたいです。

また是非ご一緒させてください。
よろしくお願いします。

元やん さんのコメント...

お地蔵さんとの3ショット、、、キモかわいいですね。

Unknown さんのコメント...

元やん、お地蔵さんとのショットすごく表情がいいでしょう!元やんの人柄がお地蔵さんに囲まれることによって、ストレートに伝わってきます。写真ぜんぜんだめだけど、この写真は自信があるんだな、チョット。

Unknown さんのコメント...

つ・あさん、先日はお世話になりました。本ですが、リンクを張ったところから読めます。著作権はとっくに消滅してますので。今後もよろしくお願いします!

磯五郎 さんのコメント...

Actonさんの文章は、本当に美しいですね。実際漕いでる人と同一人物とは思えません(
笑)なぜ、みなさんがこんなにも檜枝岐に思い入れがあるかわかった気がします。

天気に恵まれ、素晴らしい川にお誘いいただき、ありがとうございました☆

Unknown さんのコメント...

磯五郎さん、先日はありがとうございました。桧枝岐は特別なんです。この土地に対する想いがブログにでちゃうのかもしれません。またよろしくお願いします。